接触禁止の約束を破られたら?違約金は取れるのか、請求の流れと注意点

示談が済んで、「もう会わない」という約束も交わした。これで終わったと思っていたのに、夫のスマホに再び同じ名前が並んでいた。あるいは、二人が会っているところを見てしまった。そんなとき、怒りとともに、「約束を破ったのだから、違約金は取れるのでは」と考えるはずです。
この記事では、接触禁止の約束を破られたときに違約金を請求できるか、そのために確認すること、請求の流れを整理します。ご相談を見ていると、つまずく人の多くは、法律の知識よりも「約束を破った証拠をどう押さえるか」のところで止まっています。
先に結論:違約金が取れるかは「示談書の書き方」と「接触の証拠」しだい
- 違約金を請求できるのは、示談書に違約金の定めがあり、約束違反が証拠で示せる場合です。
- 違約金の条項があると、請求のために示す必要があるのは肉体関係ではなく「接触の事実」になり、最初の慰謝料請求より証拠は取りやすいといえます。
- ただし「誰と接触したか」の特定ができないと、請求はむずかしくなります。
- 示談書が整っていても、あとから「無理に書かされた」と争われることがあります。
- 違約金があまりに高額だと、見直されることがあります。
接触禁止と違約金とは
示談書には、慰謝料の金額のほか、次のような取り決めを入れることがよくあります。
- 接触禁止:夫と浮気相手が、今後は会わない・連絡しない、という約束
- 違約金:その約束を破ったときに、決まった金額を払う、という約束
- 口外禁止:不貞のことを第三者に話さない、という約束
気持ちの上では「もう会わない」と信じたい約束ですが、法的には、書面に書いて初めて強く機能するものです。口約束だけでは、破られても証明がむずかしくなります。示談書に入れる内容の全体像は、示談したあとに嘘が分かったら:示談のやり直しはできるかでも触れています。
請求の前に、示談書で確認すること
まず示談書を手元に出して、次の点を見てください。
- 違約金の定めがあるか。ないなら、違約金そのものは請求しにくくなります。
- 「接触」の範囲。会うことだけか、電話・LINE・SNSなど連絡も含むか。
- 誰が誰に約束しているか。夫も約束した当事者か。
- 違約金の金額と、払う人。1回ごとに発生するのか、1回きりなのか。
- 例外の定め。仕事上のやりとりが避けられない場合などは、例外が書かれていることがあります。
特に2は、あとで争いになりやすい点です。「偶然会った」「仕事の連絡だった」と言われることもあるので、示談書の文言をそのまま確認してください。
実際の相談から:約束があっても、つまずく3つの場面
ここからは、ご相談をもとにした例です。
相談の例:違約金の条項を入れたのに、連絡専用のアカウントで続いている
- 示談書に接触禁止と違約金を入れているなら、関係の証拠を取る難易度は比較的低くなる。
- ただ、アカウント名だけでは、以前の相手と同一人物だと決めつける材料がなく、いまのままの請求は少し難しい。
- 関係が続くことへの不安が強いなら、成功報酬型の探偵も含めて検討するとよい。
最初の慰謝料請求では、肉体関係を示す必要があるため、ホテルの出入りのような強い証拠が求められがちです。一方で、接触禁止の違反は、「示談書の相手と、会った・連絡した」ことを示せば足りるので、見るべき材料が変わります。たとえば、顔が分かる形で二人が会っている場面や、本人と特定できる連絡の記録です。
ここで落とし穴になるのが、この例のような「匿名のアカウント」です。「たぶん同じ人」という推測だけでは、相手に「別人だ」と言われて終わってしまいます。本人だと結びつく材料を、先に集めることが大切です。
相談の例:相手は仕事で顔を合わせる人。接触禁止の合意書は意味があるか
- 相手が書いてくれるなら、書式が合意書でも公正証書でも、まずは大きな問題ではない。
- ただし相手が認めなければ、夫が認めた内容は、相手に対する証拠にならない。それ以上、相手に何かを強制することはできなくなる。
- 夫の自白も、離婚できなくなると気づいてから撤回される例が少なくない。
- 内容証明は「送れる」だけで、相手に不貞を認めさせる力はない。
- 相手がまだ夫と会っているなら、その場面を探偵に押さえてもらうほうが先。
- 支払い能力は、仕事をしていれば、最終的に給与の差押えもあり得る。大事なのは、不貞を認めさせられるかどうか。
合意書に署名をもらっても、裁判になったとき、相手に「夫に無理やり書かされた」と主張された例もあります。署名を求めた場面の状況は、あとから問われやすい点です。
また、別の相談のように、同じ会社どうしで不倫している場合は、接触禁止を交渉に入れても、同じ会社なら接触は避けられません。職場や取引で顔を合わせる関係では、仕事上のやりとりは例外とし、私的な連絡や二人きりで会うことを禁じるなど、書き方を工夫する必要があります(どう書くかは弁護士に確認を)。会社に責任を問うことや、会社へ知らせる方向に進むのは別の話で、会社に伝えたときの名誉毀損のリスクも確認しておきましょう。
相談の例:離婚はしない。違約金を「1回ごと」の形で公正証書に入れた人
この例では、次のような進め方がありました。
- 離婚しない場合の請求だったので、請求額はあえて高めに設定し、その7割ほどで着地した。
- 示談の内容は公正証書にして、接触禁止に違反したときの違約金を、連絡1回ごとに10万円前後と決めておいた。
- 実際にその後、相手から連絡があり、違約金を追加で払ってもらえた。
- 相手に仕事があり、支払い能力があったことが大きかった。
これは一つの例であり、結果は事情によって大きく変わります。それでも、「1回ごと」という形にしておくと、違反があったとき金額で争いにくい点は参考になります。もう一つ、払える相手かどうかは、示談のときから見ておきたい点です。公正証書に強制執行認諾文言(支払いが止まったときに裁判なしで差押えの手続きに進める旨の文言)を入れておくと、支払いが止まったときに手続きを進めやすくなります(慰謝料を払ってもらえないとき)。
相談の例:示談書にサインさせたのに、あとで無効を主張され、連絡も再開した
- 前回の不貞から1年以上たっているので、あらためて請求すると、相手はあらゆる反論を持ち出すと想定される。
- だからこそ、いまの時点で言い逃れできない確実な証拠を押さえることの重要性が高い。
- 調査の回数は状況しだいだが、まずは最低1回の調査を考える。
- 証拠はまず確実な1回分を押さえてから、集められるものを足していく。
別の相談のように、示談書を作らないまま慰謝料を受け取っていた場合、同じ不貞について、あらためて請求するのは原則難しいといえます。ただし、そのあとも関係が続いていたことが分かれば、別の不貞として請求できる可能性があるという考え方もあります。
ここで気をつけたいのは、示談書の「清算条項」(これで全て解決した、という内容)の範囲です。どこまでの問題を解決済みとしたのかは、書き方で変わります。新たな不貞に及ぶかどうかは、示談書の文言を見ながら弁護士に確認してください。
約束違反を示す証拠
違約金を請求するときは、請求する側が、約束違反を示す必要があります。次のようなものが材料になります。
- 連絡のやりとり(LINE・メール・通話履歴)の記録で、本人と特定できるもの
- 二人が会っていることが分かる写真
- クレジットカード明細や領収書
- 探偵などによる調査報告書
「会っているところを見た」という記憶だけでは弱く、日時や場所、相手が分かる記録が力になります。記録の残し方は、スクショの取り方と保存方法が参考になります。
証拠集めで、やってはいけないこと
- 他人のスマホやアカウントに無断でログインする。不正アクセス禁止法などの問題になり得ます。
- 車などにGPSを無断で取り付ける。違法になり得ます(GPS・位置情報は浮気の証拠になる?)。実際の相談でも、車に取り付けた機器が見つかってしまい、証拠が取れなくなった例がありました。
- 自分で長時間の尾行を続ける。気づかれやすく、安全面でも心配です。
違約金は、いくらでも取れる?
示談書に書いた金額が、そのまま全額認められるとは限りません。「払えないほど高額にすれば抑止力になる」と考えがちですが、あまりに高いと、争われたときに見直されることがあります。示談を結ぶときには、次を意識しておくと、あとで困りにくくなります。
- 金額は、慰謝料の額や、違反の重さとのバランスをとる。
- 違約金は、1回ごとに発生するのか、一度きりかを明確にする。
- 新たな不貞があったときは、違約金とは別に慰謝料も請求できるかを確認する。
請求の流れ
約束違反に気づいたときは、次の順で進めます。
- 証拠を押さえる:すぐに問い詰めず、まず記録を残す。問い詰めると、連絡が地下に潜って、証拠が取りにくくなることがあります。
- 示談書を確認する:違約金や接触禁止の範囲を読み直す。
- 内容証明などで、違約金を請求する:内容証明郵便の書き方と送るタイミングを参考に、落ち着いた文面で。
- 払われなければ、調停や裁判を検討する:弁護士に相談しながら進める。
示談書が、強制執行認諾文言つきの公正証書になっていれば、支払いが止まったとき、裁判なしで差押えの手続きに進めます。
夫に対する違約金は?
夫が接触禁止の約束の当事者になっている場合、夫に違約金を請求することもできます。ただ、離婚せず同じ家計で暮らしているなら、夫が払う違約金は実質的に家計から出ることになります。夫婦のお金は動いても、手元に残るお金は変わらない場合もあります。
その場合は、金額よりも、今後どうするか(再構築か離婚か)を軸に考えたほうが、納得しやすくなります。再構築を選ぶなら、再構築を選ぶ前に決めておくことも参考にしてください。
証拠や請求の進め方に迷ったら
約束違反の証拠は、時間がたつほど集めにくくなります。証拠の集め方や請求の進め方に迷うときは、探偵や弁護士への相談も選択肢のひとつです。示談書を持参して、「この条項で請求できるか」を見てもらうだけでも、道筋が見えやすくなります。
よくある質問
気になるところを、質問ごとにまとめました。質問をタップすると、答えが開きます。
示談書に違約金の記載がないと、何もできませんか?
違約金を請求するのはむずかしくなります。ただ、新たな不貞があった場合は、改めて慰謝料を請求できる可能性があります。弁護士に状況を伝えて確認してください。
偶然会っただけでも、違約金の対象になりますか?
示談書の文言しだいです。「偶然の場合は除く」とあれば対象外になりやすく、定めがなければ争いになることがあります。故意に会ったかどうかが問題になりやすいです。
連絡専用のアカウントでやり取りしているのを見つけました。相手が誰か分からなくても請求できますか?
アカウント名だけでは以前の相手と同一人物だと決められず、請求は難しくなります。本人と結びつく材料を押さえてから請求することになります。
相手に署名してもらった合意書は、あとから争われませんか?
相手が「無理に書かされた」と主張した例があります。署名の経緯が後から問われやすいので、内容や進め方は弁護士に確認しながら進めてください。
浮気相手から連絡してきただけで、夫は何もしていない場合は?
示談書で夫がどんな約束をしたかによります。夫の対応(返信したか、会ったか)も、判断の材料になります。
まとめ
- 違約金は、示談書に定めがあり、違反が証拠で示せる場合に請求できる。
- 請求に必要なのは接触の事実と、相手の特定。匿名アカウントは本人と結びつく材料が要る。
- 相手が認めなければ、夫の自白は相手への証拠にならない。署名も後から争われ得る。
- 1回ごとの違約金と、払える相手かの見極めが、示談のときの要点。
- 無断のスマホ調査やGPSは避け、記録を残して専門家に相談する。
約束を破られたのは、本当につらいことです。感情が揺れるときこそ、証拠と書面を頼りに、一歩ずつ進めていきましょう。
この記事の情報源
- 民法(第709条・第710条)(2026年10月11日確認)
- 民事執行法(2026年10月12日確認)



