ダブル不倫(W不倫)で妻が気をつけること:相手の配偶者との関係と請求

浮気相手にも、家族がいた。夫の不倫相手も既婚者だと知ったとき、「相手の家庭まで壊すのか」と迷う人もいれば、「向こうの家庭にも知らせたい」と思う人もいます。被害を受けたのは自分なのに、状況が複雑になって、何を優先すればよいのか分からなくなりますよね。
この記事では、よくあるご相談を手がかりに、ダブル不倫(W不倫)の場合に妻が気をつけたいことを整理します。キーワードは、請求が両方向に発生しうること、そして相手の配偶者への接し方です。自分の暮らしを守るために、先に頭に入れておきたい点をまとめました。
先に結論:請求は「こちらから」だけではなく「相手の配偶者から」も来る
- ダブル不倫では、相手の配偶者も被害者です。夫に対して慰謝料を請求してくる可能性があります。
- 離婚しない場合、夫婦の家計が同じだと、お金が出入りするだけになり、思ったほど手元に残らないことがあります。ただ、「それでも請求の意味はある」という見方もあります。
- 相手の配偶者に知らせる前に、名誉毀損や、請求の戦略を考えて動くのが安全です。
- 示談をしても、関係が続くことがあります。示談書の中身と、その後の証拠が大切です。
ダブル不倫とは、どういう状況か
ダブル不倫(W不倫)は、夫も相手の女性も、それぞれ配偶者がいる状態での不倫を指します。通常の不倫と違うのは、被害者が二組いることです。
| 立場 | 加害者になる人 | 被害者になる人 |
|---|---|---|
| あなた(夫の不倫) | 夫、浮気相手 | あなた |
| 相手の配偶者 | 浮気相手、あなたの夫 | 相手の配偶者 |
あなたの夫は、あなたに対しても、相手の配偶者に対しても、責任を問われる立場です。
慰謝料請求の基本は、通常の不倫と同じ
慰謝料の根拠は、不貞行為(民法709条・710条)です。配偶者以外の人と、自由な意思で肉体関係を持つことを指し、証明する責任は請求する側にあります。
相手も既婚者であっても、あなたの慰謝料請求は成り立ちます。ただし、次のように、金額と家計の関係が複雑になります。
請求できる期間は、損害と加害者(浮気相手)を知ったときから3年、不法行為のときから20年です(民法724条)。
実際の相談から:ダブル不倫で迷いやすい場面
ここからは、ご相談をもとにした例です。ダブル不倫の相談で、とくに多かった悩み(家計への影響、相手や相手の配偶者との関わり方、示談後の関係)を順に見ていきます。
相談の例:相手が離婚する場合、こちらの請求のほうが少なくなるのでは
- 今の夫の言葉は、当てにならない。大切なのは、きちんと責任を取らせたあとの、夫の態度。
- 相手の請求額のほうが多くなるかどうかは、考慮しなくてよい。それは夫が負うべき責任であって、妻が背負う話ではない。
- 相手に離婚の意思があったかどうかは、気にしても仕方がない。ただ、相手が「離婚寸前だ」と積極的に持ちかけられていたのなら、減額の材料にはなり得る。もっとも、夫の言い訳に聞こえる。
- 一方が再構築、他方が離婚というだけで、双方の慰謝料額に大きな差が出るとは考えにくい。ただし、理論を整える必要があり、弁護士の力量によるところもある。
- 証拠がLINEと夫の自白だけなら、相手に全面的に否認されて、不貞が認められないおそれが残る。今後の証拠が望めないなら、事情を踏まえて弁護士に相談を。
この例で押さえたいのは、「どちらの請求額が多いか」を計算する前に、請求できる状態にあるかを確かめることです。夫の自白は、夫自身には使えても、相手本人にとっての直接の証拠にはなりにくいとされます。
別の相談でも、「相手も既婚なら、実質、慰謝料は相殺になるのでは」という疑問が出ていました。このときは、損得の計算より先に、「不貞はこれだけ大変なことになる」と夫に実感させることが目的だと考えます。そのうえで、相手の女性に請求することが夫にとって最も重く響くので、できれば専門家を入れて進めるのがよいでしょう。
ここで気をつけたい点として、家計が一つの状態で、夫に請求しても、お金が行き来するだけになる面はあります。夫に何を求めるかは、離婚するか再構築するかで変わります。離婚しない場合の慰謝料相場や、離婚するか再構築か迷ったときの整理の仕方も参考にしてください。
相談の例:夫の同僚である既婚の女性に、会って聞きたい
- 相手に会って不利になったことはなかった。ただし、会うときは「許す」とも「脅す」ととれる言葉も言わない。
- 相手の了解を得て録音しておく。謝るなら、念書を書いてもらう。
- 会う前に、離婚か再構築か、相手に何を求めるか(罰としての請求、退職、示談金など)を決めておく。
- 相手から夫に請求が来ても、夫の小遣いなど自由になるお金から払ってもらえばよい。再構築するなら、夫にもけじめを。
- ホテルの出入りのような確証がないなら、本人たちの自白だけでは請求が難しい。弁護士を入れて、高めに請求し、落としどころで示談にする。離婚しない場合は、請求額より低い金額で合意したうえで、接触したら1回ごとに違約金を払う約束を公正証書にする方法もある。
相手に会うかどうかは、会う目的が決まっているかで変わります。話し合いの場での言葉が、あとで「脅された」と受け取られることもあるためです。会うことのリスクは浮気相手に直接連絡・会うときのリスクで、相手が職場の人のときの注意は浮気相手が職場の同僚・部下だったときで整理しています。
ここで気をつけたい点として、これはあくまで一例で、個別の事情で結果は変わります。会う前に、一度弁護士に相談しておくのが安心です。
相談の例:相手の配偶者に知らせたい。でも、相打ちになるのが怖い
- 離婚しない前提だけで考えると、相手がたちの悪い場合はつけ込まれやすい。「別れも選択肢に入れられるか」が、態度を決めるうえで重要。
- 夫には、「自由に使えるお金(小遣いや借金)の範囲でなんとかしなさい」と、強固な態度を示すことが必要。
- 相手に支払う力が本当にないなら、残念ながらどうにもならない。ただ、減額を求めてそう言うケースが多いのも事実。
- 時効に注意。損害と相手を知ったときから3年で、証拠の有無などで起算点がずれることもあるため、余裕をもって進める。
- 時効の完成前に内容証明郵便を送れば、ひとまず6か月、完成を延ばせる。ただし、その6か月のうちに裁判を起こさなければ時効が成立してしまう。簡易な裁判の方法もあり、証拠が確かなら自分でも十分に見込みはある、という説明だった。
- 相手の夫に知らせたい気持ちについて、法律に関わる立場としては違法になりかねない行為は勧められない、としたうえで、リスクを覚悟のうえで自分で決めるしかない、と述べていた。
ここで大事なのは、相手の配偶者に知らせることは、自分の請求を有利にするとは限らないことです。相手の配偶者が動けば、夫への請求が先に進み、家計から出ていくお金が増えることもあります。さらに、伝え方によっては名誉毀損が問題になり得ます(刑法230条)。時効の考え方は、慰謝料請求の時効と内容証明郵便の書き方と送るタイミングで確認できます。
相談の例:相手の夫とも示談が済んだのに、またやり取りが続いている
- 前回の不貞から1年半ほどたっているので、いまからあらためて請求すると、相手はあらゆる反論を持ち出すと考えられる。
- そのため、いまの時点で確実な証拠を押さえることの重要性が高い。
- 回数は状況次第だが、まずは最低1回を目標に考える。
- ほかの証拠集めはいったん控えめにして、確実な証拠を取ってから、可能な範囲で集める。
- 状況が込み入っているので、弁護士に詳しく相談を。
ここから分かるのは、示談が済んでも、示談後に関係が続いた場合は新たな問題になり得ることです。ただ、時間がたつほど、相手は「昔のことだ」「別の話だ」と反論しやすくなります。何が示談の対象で、何が対象外なのかは、示談書の書き方次第です。詳しくは示談したあとに嘘が分かったらも参考にしてください。
別居する場合は、会う機会が増える一方で、妻から動きが見えにくくなります。別居の前に、別居を始めるタイミングと生活費も確認しておきましょう。
夫と浮気相手の責任は、連帯する
夫と浮気相手は、連帯して責任を負うとされます(不真正連帯債務)。どちらか一方が全額を払えば、他方に負担割合に応じて求償できます(求償権)。ただし、二重取りはできず、総額は損害額までです。
ダブル不倫では、この求償権が絡むことで、家計の流れが複雑になりやすいです。たとえば、夫と相手が連帯してあなたに支払い、その後、二人の間で負担を調整する、という形が考えられます。詳しい仕組みは、夫と浮気相手の両方に請求するときの求償権で整理しています。
慰謝料の金額は、事情によって変わる
金額は、婚姻期間、不貞の期間や回数、子供の有無、婚姻関係の破綻の有無、不貞後の態度などで増減します。離婚しない場合は数十万〜100万円程度、離婚する場合は100万〜300万円程度が一般的な目安とされますが、事情で上下します。
ダブル不倫でも、基本の考え方は変わりません。ただ、自分の家庭が離婚に進むのか、続けるのかで、請求の組み立ては変わります。迷う場合は、慰謝料が減額されるケースも参考にしてください。
相手の配偶者に知らせるかどうか
最大の判断が、ここです。
知らせるメリット
- 相手の配偶者と情報を共有し、証拠が集めやすくなる場合がある
- 相手の家庭内で、不倫を続けにくい状況が生まれる可能性がある
知らせるリスク
- 相手の配偶者の反応が読めず、事態が大きく動くことがある
- 伝え方によっては、名誉毀損(刑法230条)が問題になり得る
- 相手の配偶者が、夫への請求を先に進めてしまうかもしれない
- 相手の家庭が荒れ、相手自身が追いつめられることも
職場や家族への暴露は、事実でも名誉毀損の対象になり得ます(夫の上司・会社に伝えても名誉毀損にならないか)。「同じ立場だから話せば分かってくれる」と考えて動くと、思わぬ展開になることがあります。知らせるかどうかは、証拠が整い、請求の方針が決まってから、弁護士に確認して判断するのが安全です。
相手の配偶者から夫に請求が来ていたとき
相談の中には、夫が相手の配偶者から慰謝料を請求されたときの書類を、妻が持っているという例もありました。夫は不貞を認めていて、請求された記録もあるため、妻は、これで十分に証拠になると考えていました。
夫が認めたものは、相手本人に対する直接の証拠にはなりにくい、というのが答えです。相手が全面的に否認すれば、難しくなるためです。文字のやり取りだけでは不貞が認められなかった例もあるので、弁護士には「相手が全否定した場合にどうなるか」を確かめてください。「大丈夫でしょう」という返事は、全否定しないことが前提になっている場合も多いからです。
夫の自白や録音の扱いは、夫の自白や録音は証拠になる?でくわしく整理しています。
やってはいけないこと
- 相手の配偶者に、感情的に連絡する。 相手の配偶者の出方次第で、状況が一気に変わります。
- SNSや職場で、相手の不倫を広める。 名誉毀損になり得ます。
- 相手の配偶者と、安易に「共闘」の約束をする。 利害が一致しなくなることがあります。
- 相手の家に押しかける。 別の問題になります。
- 夫のスマホに無断でログインして証拠を取る。 不正アクセス禁止法などの問題になり得ます。
- 証拠のないまま、夫や相手を問い詰める。 家族ぐるみで付き合っていた相手の不倫に気づいた妻が、LINEだけを手がかりに問い詰めようとした相談がありました。LINEの内容だけで簡単に認めることはほとんどなく、問い詰めて警戒されたまま泣き寝入りになった例が多いため、止めたほうがよいでしょう(証拠なしで問い詰めると何が起きるか)。
示談で決めておきたいこと
示談書には、次のようなことを書きます。
- 慰謝料の金額と支払い方法
- 接触禁止(連絡、会うことの禁止)
- 違約金(約束を破った場合)
- 口外禁止
- 相手の配偶者との関係で、どちらがどこまで責任を負うか
ダブル不倫では、相手の配偶者が夫に請求したときの扱いも、前もって確認しておくと安心です。
示談書で実際に起きていること
示談書については、次の点が押さえどころです。
- 4人で話し合い、双方に弁護士が入って合意書を交わし、お金のやり取りも済んでいる。あとから、当時の費用や、言い足りなかったことを相手に求めたくなった妻がいた。弁護士が入った合意書には、通常「これですべて解決した」とする清算条項が入るため、追加の請求や謝罪の要求は、リスクばかりといえる。
- 合意書を書いてもらったが、裁判になって、「無理やり書かされたので無効だ」と主張されたという例もある。
- 自白や合意書を取れば安心とは限らない。強制はせず、客観的な証拠を前もって押さえておくことが大事である。
- 内容証明を送れば、すぐに相手が謝罪してくるとも限らない。「受けて立つ」相手のほうが多い。
示談の取り決めに関わる点は、接触禁止の約束を破られたときにも整理しています。後から嘘が判明した場合の扱い(清算条項の範囲)は、書き方次第で変わるので、弁護士に確認してください。
証拠の集め方や請求の進め方に迷うときは
相手が既婚者だと、会う日が限られ、動きが読みにくいことがあります。自分で尾行や張り込みを続けるのは、気づかれやすく、安全面でも心配です。証拠の集め方や請求の進め方に迷うときは、探偵や弁護士への相談も選択肢です。探偵は事実の調査と報告までで、示談交渉や法律相談はできません。請求の組み立ては、弁護士に確認してください。
よくある質問
気になるところを、質問ごとにまとめました。質問をタップすると、答えが開きます。
相手の配偶者から、先に連絡が来ました。どうすればよいですか?
その場で約束や金額の話をせず、連絡内容を保存して、落ち着いてから対応します。感情的なやりとりを避けるため、弁護士に相談するのも一つの方法です。
相手の配偶者も被害者なので、請求しないほうがよいですか?
請求するかどうかは、あなたが決めてよいことです。相手の配偶者が被害者であることと、あなたの権利は別の話です。気持ちが整理できないときは、時効(3年)に気をつけながら、ゆっくり考えてください。
夫婦ともに既婚者でも、「婚姻関係が破綻していた」と言われることはありますか?
夫や相手が「すでに破綻していた」と主張することはあります。婚姻関係がすでに破綻していた場合、慰謝料が認められにくくなったり減ったりすることがあります。実際の判断は事情を総合して行われます。
相手が「離婚するところだった」と言っています。慰謝料は取れませんか?
相手に離婚の意思があったことだけで、請求できなくなるとは限りません。相手が離婚を持ちかけられていたなら減額の材料にはなり得ますが、夫の言い訳に聞こえることも多いものです。個別の事情は、弁護士に確認してください。
離婚しないのに、夫に慰謝料を請求する意味はありますか?
家計が一つなら、お金が行き来するだけになる面はあります。一方で、夫に責任の重さを実感させる意味や、再構築の条件を整える意味はあります。何を目的にするかを決めて、請求の相手や金額を考えます。
夫と浮気相手が、家庭に帰らず同居してしまいました。
状況が変わるため、早めに弁護士に相談してください。別居や婚姻費用など、生活の面でも整理が必要です。
まとめ
- ダブル不倫では、相手の配偶者も被害者で、夫に請求が来ることがある。
- 家計が同じだと、お金が行き来して手残りが少なくなることがある。請求の目的を先に決めておく。
- 夫の自白だけでは、相手本人への証拠として弱い。相手が全否定した場合を考えて備える。
- 相手の配偶者への連絡や暴露は、名誉毀損などのリスクがあるため慎重に。
- 示談では、金額・接触禁止・清算条項・口外禁止などを書面で整える。示談後に関係が続いたときのための証拠も意識する。
複雑な状況ほど、一人で整理するのは大変です。焦らず、一つずつ確認していきましょう。
この記事の情報源
- 民法(第709条・第710条・第724条)(2026年10月12日確認)
- 刑法(第230条)(2026年10月12日確認)



