浮気の慰謝料が減額されるケースとは?婚姻関係の破綻・期間・回数など

慰謝料を請求したところ、相手から「そんなに払えない」「夫婦はもう壊れていたはずだ」と反論された。そんな状況で、自分の請求がどこまで通るのか、不安になっていませんか。
慰謝料の争いでは、減額の話がほぼ毎回のように出てきます。相手が使う言い分には、いくつか決まった型があります。この記事では、減額につながる事情と、よくある反論への備え方を、ご相談をもとに整理します。
先に結論:減額の理由は「婚姻の状態」と「不貞の中身」で見られる
- 慰謝料は、夫婦の関係がどうだったかと、不貞がどんな内容だったかを総合して決まります。
- 特に大きいのは、不貞の前から婚姻関係が破綻していたと判断される場合。慰謝料が認められにくくなったり、減ったりします。
- 相談で最も多かったのは、「夫婦仲はもう冷めていた」「別居したあとの関係だ」という破綻の主張でした。
- 減額を主張されても、そのまま受け入れる必要はありません。反論に使える材料を、時系列で残しておくことが大切です。
慰謝料の相場と、金額が動く仕組み
一般に言われる目安は次のとおりです。ただし、あくまで目安で、事情で上下します。
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| 離婚しない場合 | 数十万〜100万円程度 |
| 離婚する場合 | 100万〜300万円程度 |
金額が上下する主な要素は、婚姻期間の長さ、不貞の期間や回数、子どもの有無、婚姻関係が破綻していたかどうか、不貞のあとの態度です。裁判所は、これらをまとめて見て判断します。
相場の詳しい考え方は、離婚する場合の慰謝料相場と、金額が上下する要素や離婚しない場合の慰謝料相場でも整理しています。
減額されやすいケース
1. 不貞の前から、婚姻関係が破綻していた
いちばん争いになりやすいところです。浮気をした夫や相手が、「夫婦関係はもう壊れていた」と主張するパターンです。
破綻していたと認められると、慰謝料が認められにくくなったり、減ったりすることがあります。ただ、「夫婦仲が悪かった」というだけでは足りないことが多く、実際には次のようなことが見られます。
- 別居していたか。していたなら、いつから、どのくらい続いていたか
- 離婚の話し合いが具体的に進んでいたか
- 同居していても、会話や生活のつながりが完全になくなっていたか
相談の例:不貞が分かると、夫が「もう夫婦は終わっていた」と言い出した
- 「破綻していた」は不貞をした側がよく使う主張。同居し、生活をともにしていたなら、破綻とは認められにくいとされる。
- 生活費をどう出し合っていたか、家計を協力して運営していたかが、反論の材料になる。
- 夫婦らしいLINE、日記、食事の記録、家族での出かけ先の写真など、夫婦の生活が続いていた証拠を残しておく。
- 水面下で調べている間に、仲のよい様子の写真を意識して残した人は、破綻の主張を退けられたという。
- 「既読スルーで拒絶された」など、小さな出来事を大きく言い立てる人もいるので、相手の言い分は一つずつ確認する。
この例の分かれ目は、破綻を覆す材料を、不貞が分かった時点から意識して集められるかどうかです。冷え切っていた時期でも、同居と家計の共有が続いていた事実は残ります。気づいた時点から、家族の写真、食事の記録、生活費の振込記録を保存しておきましょう。ただし、実際に破綻と判断されるかは個別の事情で変わるので、弁護士に確認してください。
相談の例:「別居してからの関係だ」と言われた
- 勝手に家を出て行ったのであれば、簡単に夫婦関係の破綻は認められない。別居後の不貞が簡単に認められるなら、誰でも出て行ってやりたい放題になってしまう。
- 別居の前か後かだけに、こだわりすぎなくてよい。
- 相手が弁護士をつけているなら、こちらも弁護士に委任するべき。個人でどうにかできる相手ではない。
- モラハラの主張も、立証は簡単ではない。
別居の前後は、争いになりやすいところです。別居の理由が不貞だったのか、いつから不貞があったのかを、時系列で整理しておく必要があります。別居の少し前まで家族で過ごしていた写真のような、ありふれたものが、反論に役立つことがあります。
相談の例:結婚して間もない時期。夫が「あなたにも原因がある」と言う
- 夫の言い分は、法的にはほとんど通らない。
- 慰謝料の減額が認められやすいのは、別居していた、婚姻が破綻していたなど。この例では、同居が続いていて、将来の話もしていたなら、破綻とは言いにくい。
- 妻への慰謝料請求は、不貞やDVのような重い事情がなければ難しい。「家事の不満」のようなものは理由にならない。
- 不貞をした側からの離婚請求は、認められにくい。離婚に応じない選択をして、生活費を払わせ続ける考え方もある。
「あなたにも原因があった」は、よく聞く反論です。しかし、ふだんの不満や言い合いは、不貞を正当化する理由にはなりにくいとされます。ただし、婚姻期間が短いと、金額が低めに見られやすいという点は別の話です。こちらは、次の例で見てみます。
2. 浮気相手が「既婚者と知らなかった」場合
相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに過失がない場合は、責任が認められにくくなります。知り合った経緯や、やりとりの内容から判断されます。詳しくは浮気相手が「既婚者と知らなかった」と言うときを見てください。
「夜に電話ができない」「泊まれない」「トーク履歴を毎回消す」「会うのはいつも相手の家」などの材料を並べて、「気づけたはず」と考える妻もいます。ただ、「それでも気づかない人はいる」ため、まず請求してみて、あとは裁判に委ねる方法があります。
3. 婚姻期間が短い
結婚してからの期間が短いほど、金額が低めに見られやすいと言われます。
相談の例:結婚1年足らず。探偵費用がかさみ、手元に残る額が気になる
- 離婚しない場合は、50万〜100万円が妥当なラインになりやすい。裁判をしても、その程度になりそう。結婚期間も短い。
- 内容証明だけなら、弁護士なしで自分でも作って送れる。相手に支払う意思があるなら、最後まで自分で交渉する人もいる。
- 相手が支払いを拒否した場合は、再度の交渉、自分で裁判、弁護士への依頼という道がある。
- 示談書と公正証書を不備なく作ることが大切。この書類作成の確実さのために、弁護士や行政書士を使う人が多い。
ここで見ておきたいのは、「いくら取れるか」と「費用を引いて手元にいくら残るか」は別の話だということです。婚姻期間が短い場合、証拠がそろっていても金額には限りが出ます。探偵や弁護士にいくらかけるかは、請求の見込み額とあわせて考えてください。見積もりは総額で確認し、複数の窓口で比べましょう。
4. 不貞の期間が短い・回数が少ない
たった一度の関係と、長期間続いた関係とでは、見られ方が違います。ただ、一度きりでも、状況の悪質さで考慮されることがあります。
5. 子どもがいない
子どもがいる家庭のほうが、与える影響が大きいと見られるため、子どもがいないと金額が低くなる方向に働くことがあります。
6. 不貞のあとで、謝罪や反省がある
不貞後の態度も見られます。早い段階で誠実に謝罪し、関係を終わらせた場合は、考慮されることがあります。
7. 夫がすでに慰謝料を払っている
夫と浮気相手は、連帯して責任を負います。そのため、夫がすでに慰謝料を受け取る形で払っていれば、相手に請求できる額が減ることがあります。二重取りはできません。仕組みは夫と浮気相手の両方に請求するときの求償権にまとめました。
減額されにくい(増額につながる)事情
逆に、次のような事情は、金額を高める方向に働くと言われます。
- 婚姻期間が長く、不貞の期間も長い
- 回数が多く、継続的だった
- 子どもがいて、家庭への影響が大きい
- 不貞が原因で、夫婦関係が壊れた、離婚に至った
- 嘘や隠蔽が悪質で、反省が見られない
これらも、一つで金額が決まるわけではありません。大切なのは、自分の状況にどれが当てはまるかを把握しておくことです。
「払えない」と言われたとき
相手が「払えない」「相場より高い」と言ってくるのは、よくある場面です。
相談の例:「経済的に払えない」と言われ、相手が弁護士を立ててきた
- 認めていた相手が、百万円単位の請求に驚いて、突然否定に転じることは少なくない。そうなると、証拠が足りない問題が出てくる。
- 慰謝料の相場は幅が広く、証拠が弱いなら低めに請求するか、確実な証拠を固めて高めに請求するか、複雑な判断になる。
- 相手に弁護士がついたら、詳しい事情を踏まえた弁護士の見解を一度聞いておく。契約するかどうかは、その後でよい。
- 無職で収入がなく、本当に支払い能力がないなら、どうしようもない場合もある。ただし、減額交渉としてそう主張してくるケースが多いのも事実。
「払えない」という主張は、金額を減らす材料にはなっても、不貞の責任がなくなるわけではありません。ただ、相手が本当に払えないのか、減額のための主張なのか、見分けるのは簡単ではありません。収入や勤務先が分かっているなら、請求額を下げる前に、支払いの方法を相談するほうがよい場合もあります。
下げた請求額は、あとから元に戻しにくくなります。「早く終わらせたい」という気持ちで、何度も減額に応じる前に、一度立ち止まって弁護士の意見を聞いてみてください。分割払いなど支払い方法の相談や、払ってもらえないときの対処は、慰謝料を払ってもらえないとき:分割・差押え・公正証書で詳しく書いています。
減額を主張されたときの動き方
相手が「減額してほしい」と言ってきたときは、次の順で動きます。
- 相手の主張を、そのまま受け入れず、理由を確認する。「払えない」のか、「破綻していた」のか、「知らなかった」のか、「別居後だ」のかで、反論の方向が変わります。
- 反論に使える事実を、時系列で整理する。旅行の写真、家族での食事、生活費のやりとり、夫婦の会話の記録などが材料になります。
- 感情的にならず、書面で記録を残す。やりとりは、可能な限りメールや書面にします。
- 早めに弁護士に相談する。主張の通りやすさは、法律の見方で大きく変わります。
やってはいけないこと
- 相手を追いつめるために、職場や家族に伝える。名誉毀損などの問題になり得ます。
- 破綻していたという主張に感情で反論して、証拠を出さない。
- 根拠のない高額を押し通そうとする。話し合いが長引き、結局不利になることがあります。
証拠や請求の進め方に迷ったら
減額の争いでは、結局のところ「何が証拠で示せるか」が大きく影響します。証拠の集め方や請求の進め方に迷うときは、探偵や弁護士への相談も選択肢のひとつです。特に、破綻の有無を争われている場合は、早めに専門家の見立てを聞いておくと安心です。
よくある質問
気になるところを、質問ごとにまとめました。質問をタップすると、答えが開きます。
夫婦仲が悪かったと言われたら、慰謝料はもらえませんか?
仲が悪かったというだけで、慰謝料がもらえなくなるとは限りません。破綻していたと認められるのは、別居や離婚協議など、かなり実態のある事情がある場合です。同居して家計を共にしていたなら、破綻とは認められにくいとされます。反論の材料を整理してください。
別居したあとの浮気だと言われました。慰謝料は取れませんか?
別居の前後が争いになることはありますが、勝手に家を出て行ったのであれば、簡単に破綻とは認められません。別居の理由と、不貞が始まった時期を、時系列で整理しておきましょう。
一度きりの浮気でも、慰謝料は取れますか?
不貞行為があれば、一度でも請求の対象にはなります。ただ、期間や回数は金額に影響するので、継続的な関係に比べると低くなりやすいです。
相手が「払えない」と言ったら、減額に応じるべきですか?
その場で決める必要はありません。支払い能力と、支払い方法(分割など)を含めて、現実的な落としどころを探る方法があります。弁護士と相談しながら進めると安心です。
夫が「お前にも原因がある」と言って払わないと言います。
ふだんの不満や言い合いは、不貞を正当化する理由にはなりにくいとされます。ただし、別居や関係の破綻があったと判断される場合は、金額に影響します。事情を整理して、弁護士に見てもらってください。
子どもがいないと、慰謝料は低くなりますか?
低くなる方向に働くことはあります。ただ、ほかの事情も合わせて総合的に判断されるので、子どもの有無だけで決まるわけではありません。
まとめ
- 慰謝料は、婚姻の状態と不貞の中身を総合して決まる。
- 最大の争点は、不貞の前に婚姻関係が破綻していたか。同居と家計の共有があれば、反論の材料になる。
- 婚姻期間・不貞の期間や回数・子どもの有無・不貞後の態度でも変わる。
- 「払えない」は減額の交渉でよく出る主張。請求額を下げる前に、弁護士の見解を聞く。
- 減額を主張されたら、理由を確認し、反論の材料を時系列で整理する。
相手の言い分をそのまま飲み込まなくて大丈夫です。事実を整理して、落ち着いて向き合っていきましょう。
この記事の情報源
- 民法(第709条・第710条)(2026年10月11日確認)



