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夫の浮気で離婚するときの財産分与:隠し財産・ローン・学資保険

最終確認日 2026-10-12(公開 2026-10-11)

財産分与:隠し財産・ローン・学資保険のイメージ写真

離婚を考え始めると、気になるのがお金のことです。浮気をした夫にも、財産を分けなければいけないのか。夫が貯金をこっそり動かしていたらどうなるのか。家のローンや子どもの学資保険は、どう扱うのか。

この記事では、浮気が原因の離婚で、財産分与がどう考えられるかを、実際の相談で多かった「隠し財産」「家とローン」「学資保険」を中心に整理します。慰謝料とは別の話なので、混ぜずに見ていきましょう。ご相談で目立ったのは、財産の中身を知らないまま話が進み、あとで「分けるものがない」と言われる流れでした。

先に結論:浮気をした側も財産分与の対象。まず「何があるか」を把握する

  • 財産分与は、夫婦で築いた財産を分ける制度で、浮気をした側でも対象になります。
  • 浮気の責任は、慰謝料で別に問われます。財産分与の割合を、浮気を理由に大きく変えるものではありません。
  • 請求できるのは、2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚から5年以内です。それ以前に離婚した場合は2年以内のままです(民法768条)。
  • 損をしないためには、離婚前に夫の財産の全体像を把握しておくことがいちばん大切です。夫名義の家やローンの有無も、早めに確認します。

財産分与の基本

財産分与は、結婚している間に夫婦が協力して築いた財産を、離婚するときに分ける手続きです。名義が夫のものでも、妻が家事や育児で支えてきた分は、夫婦の財産として考えられます。

2026年4月に施行された民法の改正では、財産分与の目的は「夫婦の財産上の公平を図ること」とされ、考える材料として、婚姻中に取得・維持した財産の額、各自の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力や扶助の状況、年齢・心身の状況・職業・収入などが例として示されました。このうち寄与の程度は、家事や育児も含めて、原則として夫婦で半分ずつとされています。

対象になる財産・ならない財産

対象になる財産

  • 結婚後に貯めた預貯金(夫名義・妻名義の両方)
  • 不動産、自動車
  • 生命保険や学資保険の解約返戻金
  • 株式、投資信託などの金融資産
  • 退職金(将来のものも、事情によって対象になり得る)

対象にならない財産(特有財産)

  • 結婚前から持っていた貯金
  • 親や親族から相続・贈与された財産

特有財産であっても、そのお金が夫婦の生活の中で混ざってしまった場合は、扱いが難しくなることがあります。区別が難しいときは、専門家に確認してください。

なお、別居したあとに増えた収入や貯金は、分与の対象になりにくいとされることが多く、別居後の収入は財産分与に影響しないと考えるのが一般的です。どの時点の財産を基準にするかは事案によるため、弁護士に確認してください。

実際の相談から:財産分与でつまずいた4つの場面

ここからは、寄せられた相談をもとにした例です。

相談の例:慰謝料の代わりに貯金をほぼ全部もらう案は、妥当なのか

  • 家の貯金をほぼ全部受け取る形なので、条件としては悪くない。ただし、夫に隠し財産がないことが前提。
  • 賃貸か持ち家か、投資をしていないか、妻の知らない口座がないかを確認する。
  • 夫の課税証明を取り、収入を把握したうえで、養育費の落としどころを決める。
  • 養育費を勤め先から振り込む形は、退職すると途絶える心配がある。会社の財形貯蓄の有無も確認する。
  • 夫の生命保険の受取人を子どもにして残してもらう交渉もある。ただし受取人はあとから変えられるため、約束の書き方に注意が必要。公正証書にどこまで書けるかは、公証役場に問い合わせる。

この例の分かれ目は、「分けるものが少ない」と思い込む前に、本当にそれだけなのかを確認する点です。ネット銀行など、本人しか知らない口座を持っているケースはよくあると言われました。逆に、財産が少ない場合は、弁護士費用をかけずに、受け取れる範囲で合意して公正証書にするのも現実的な選択です。

取り決めの書き方は養育費を確実にもらうための公正証書で詳しく扱っています。

相談の例:数年後の離婚に向けて、いま何を集めておけばいいか

  • 数年後の離婚でも、いまの準備は重要。優先するのは、育児を主にしてきた記録、夫の収入・預貯金・保険・不動産の資料、生活費や学費の記録。
  • 育児の記録は日記でも構わない。学校行事、送迎、食事、通院などが分かればよい。ただし、母親が主に育児をしている家庭では、そこまで細かく残さなくてもよいとされる。
  • 夫の財産は、いまは無理に調べなくてよい。ふるさと納税の額も収入を推測する資料になるので、分かる範囲で記録する。
  • 生活費は、離婚時に当然に遡って返す義務が生じるわけではない。ただし、争いになる可能性があるので、カードの履歴や領収書は自分でも保存する。
  • 夫の年収は、配偶者であり別居していなければ、役所で課税証明を取って分かる場合がある。委任状を求められる地域もあるので、事前に税務課に確認する。
  • 公正証書は夫の同意が必要。合意できなければ、調停で養育費や財産分与を求める。

「まだ早い」と考えていても、あとから確認できなくなる資料を、少しずつ残しておくことが、将来の財産分与の土台になります。夫のスマホや口座に無断でログインして調べることは、不正アクセス禁止法などの問題になり得るため、やめてください。

2026年4月の改正では、財産分与の手続の中で、家庭裁判所が当事者に財産の情報の開示を命じることができるようになりました。ただし、これは裁判所の手続に入ってからの話で、開示の範囲は事案によります。普段の備えとして、手元の資料を保存しておく大切さは変わりません。

住宅ローンがあるとき

家の扱いは、財産分与の中でもとくに複雑です。まず確認したいのは、今の家の価値と、ローンの残りです。

状況 考え方
家の価値が、ローン残高より高い 差額が分与の対象になる
家の価値が、ローン残高より低い 分けられる財産がほとんどない場合もある
ローンの名義が夫、住むのは妻 名義変更や借り換えができるか、金融機関の判断が必要

ローンのある家に住み続けたい場合は、名義や支払いをどうするか、金融機関の条件を確認しないと進みません。また、ローンの返済を夫が続けるという約束をしても、金融機関との契約が変わるわけではありません。

相談の例:夫名義の家の売却が進み、「設備のローンの返済に充てるから、分けるお金はない」と言われた

  • 口約束だけで出ていくと、あとで覆されて不利になる。養育費や売却金の扱いは、出る前に書面で決めておくべきだった。
  • 名義が夫単独なら、妻の意思と関係なく売却の手続きを進められてしまう。売却価格が適正か、複数社で査定を取り、売却の中身に関わる。
  • 売却金から引かれるローンが、夫婦の共有財産のためのものかによって、財産分与での扱いが変わる。住宅ローンや設備のローンの総額と、売却額を並べて確認する。
  • 夫側の弁護士の説明を鵜呑みにせず、算定表などで自分でも金額を確かめる。養育費の相場は、ネットや算定表で調べられる。

この例では、「分けるお金がない」という結論の前に、何がいくらで売れ、何にいくら使われるのかの資料を見られていないことが問題でした。出ていく前の段階で、書面にしておく。出たあとでも、売却の経過や査定の内訳を確認して、弁護士に相談する。この順番を意識すると、判断を誤りにくくなります。

相談の例:夫が家を担保にして、複数の銀行から借り入れていた

  • 売る・売らない、ローンを引き継ぐ・引き継がないにかかわらず、まず家の価値の査定とローン残高の把握が必須。その金額を持って弁護士に相談する。
  • ローンを引き継いで妻が住む場合、いま売れる額の半分を、現金で夫に渡すことになる場合もある。
  • 住み続けたいなら、買い取って借り換えられるだけの経済力をつける、財産分与を放棄する代わりに家をもらう、慰謝料を求めない代わりに家をもらう、といった交渉がある。
  • 家は、ローンだけでなく、固定資産税や修繕費、光熱費もかかる。離婚後に、アパートに移って快適に暮らしている人もいる。

どの方法が現実的かは、収入、ローンの残り、抵当権の状況によって大きく変わります。借入先の銀行に確認したうえで、弁護士と一緒に決めるのが安全です。

学資保険はどう扱う?

子どものための学資保険も、夫婦で保険料を払ってきたなら、財産分与で考慮される財産になるのが一般的です。ただし、子どもの教育のためのお金なので、扱いはケースによって工夫されます。

  • 子どもを引き取る側が、契約者を引き継ぐ形にする
  • 解約した返戻金を分ける
  • 保険料の支払いを今後誰が負担するかを決める

実際の相談では、保険料の一部を妻の実家が払っていたため、その分の名義を妻に変える予定、という人もいました。契約者や受取人の名義を変えるには、保険会社の手続きが必要です。養育費の取り決めと合わせて、書面に残しておくと安心です。

浮気に関わるお金の扱い

浮気をした夫が、夫婦の貯金から浮気相手に使っていた場合は、財産分与の計算で問題になることがあります。

実際の相談では、浮気相手に慰謝料を請求して受け取ったあと、夫が黙って相手に連絡をとり、夫婦の財産から慰謝料を肩代わりしていたと分かった妻がいました。同じ不貞について相手に重ねて請求するのは原則として難しい一方、夫が共有財産から勝手に出した分は、夫の負担になるのが原則なので、離婚の際の慰謝料や財産分与で問題にできる可能性があります。夫とのLINEの記録は保存して、いつ、いくら、どこから払われたかを確認しておくことが大切です。

借金の扱いについては、夫婦の生活のために作ったものなら考慮される場合があります。逆に、浮気相手への支出や、個人的な遊興のための借金は、扱いが変わる場合があります。判断がむずかしいので、弁護士に確認してください。

退職金は分ける?

相談の例:家を出た夫が、受け取った私の退職金まで分与を求めてきた

  • 財産分与は、結婚していた期間にできた財産を公平に分ける。不貞やDV、モラハラがあった場合の慰謝料は、それぞれ個別に考えるのがルール。納得できなくても、仕組みとしてはそうなっている。
  • 将来の退職金は、支給の見込みが低いと対象にならないことがある。すでに受け取ったものは、事情が違う。

納得できない気持ちはもっともです。ただ、財産分与で「浮気した夫には渡さない」と主張しても、通りにくいのが現実です。夫の浮気への怒りは、慰謝料という別の場所でぶつける形になります。受け取った退職金のうち、結婚していた期間に対応する部分が対象になるかどうかは、勤続の期間や支給の事情で変わるため、弁護士に確認してください。

財産を一覧にする方法

話し合いに入る前に、夫婦の財産を一覧にしておくと、見落としが減ります。表計算ソフトでも、紙のメモでも構いません。

分類 書き出す内容
預貯金 金融機関名、口座の種類、おおよその残高
保険 会社名、契約者、解約返戻金の有無
不動産・車 名義、購入時期、ローン残高
有価証券 証券会社、銘柄
借金 ローン、カードの残高、借入先

請求の期限と進め方

財産分与は、2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚から5年以内に請求しなければなりません。それより前に離婚した場合の期限は2年です(民法768条)。いずれも、期限を過ぎると請求が難しくなります。

進め方の流れは、次のとおりです。

  1. 夫婦の財産を一覧にする
  2. 話し合いで分け方を決める
  3. まとまらなければ、家庭裁判所の調停・審判を利用する

離婚届を出す前に、財産分与の内容を決めて書面にしておくのがいちばん安全です。

浮気の慰謝料とは別に請求する

財産分与のことばかりに目が向くと、慰謝料の請求期限を忘れがちです。慰謝料にも時効があります。両方の期限を、あわせて確認しておきましょう。夫から求められる金額の相場は離婚する場合の慰謝料相場で確認できます。

よくある質問

気になるところを、質問ごとにまとめました。質問をタップすると、答えが開きます。

夫が浮気をしたので、財産分与は妻が多くもらえますか?

財産分与は夫婦の財産の清算なので、浮気を理由に割合が大きく変わるものではないとされています。浮気の責任は、慰謝料として別に請求します。

専業主婦だったのですが、財産分与は受けられますか?

受けられます。家事や育児で家庭を支えてきたことが、財産形成への貢献として評価されます。寄与の程度は、原則として半分ずつとされています。

夫が財産を隠していると分かったらどうすればいいですか?

分かった範囲の資料を保存して、弁護士に相談してください。法的な手続きで調べる方法があります。2026年4月以降は、財産分与の手続で、家庭裁判所が財産情報の開示を命じることもできるようになりました。

夫の年収が分かりません。どうやって調べますか?

配偶者であれば、役所で課税証明を取って確認できる場合があります。地域によって委任状を求められることがあるので、事前に税務課に確認してください。

生活費をこっそり貯めていたら、財産分与で出さなければいけませんか?

結婚中に夫婦の収入から貯めた分は、夫婦の財産として扱われるのが基本です。隠さず、状況を弁護士に相談しておくと安心です。

離婚後に財産分与を請求できますか?

2026年4月1日以降の離婚なら離婚から5年以内、それ以前の離婚は2年以内であれば請求できます。ただし、離婚前に決めておくほうが、確実に進めやすいです。

まとめ

  • 財産分与は、浮気をした側にも認められる。慰謝料とは別の話。
  • 対象は、結婚後に夫婦で築いた財産。結婚前の財産や相続財産は別。寄与の程度は、原則半分ずつ。
  • 隠し財産への備えは、離婚の話を切り出す前の資料集めが基本。課税証明や、生活費の記録を残す。
  • 住宅ローンは、家の価値と残高、名義、売却の中身を先に確認する。口約束だけで家を出ない。
  • 請求は、2026年4月1日以降の離婚なら離婚から5年以内。

お金の話は気が重いかもしれません。けれど、ここを整えておくことが、離婚後のあなたと子どもの生活を支えます。

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