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浮気した夫が離婚を迫る:有責配偶者からの離婚請求は認められる?

最終確認日 2026-10-12(公開 2026-10-11)

浮気した夫から離婚を迫られたらのイメージ写真

浮気をしたのは夫なのに、「離婚してほしい」と言われた。自分が悪いことをしたのに、なぜ向こうから離婚を切り出せるのか。納得がいかず、頭が真っ白になった方もいると思います。

この記事では、浮気をした側(有責配偶者)から離婚を求められたとき、応じなければいけないのかを整理します。ご相談では、「有責だから離婚は通らない」と安心していた人が、「もう夫婦関係は壊れていた」という反論に慌てる場面が目立ちました。そこで、夫側が出してくる主張と、それへの備えを中心にまとめます。

先に結論:合意しなければ離婚は成立せず、有責側の請求は認められにくい

  • 話し合いでの離婚は、夫婦の双方が合意しなければ成立しません。
  • 話し合いがまとまらず裁判になっても、浮気をした側からの離婚請求は、認められにくいとされています。
  • ただし、別居が長引くなど一定の事情がそろうと、認められることもあります。事情によって変わるため、断定はできません。
  • 実際の相談で多かったのは、夫側の「浮気より前に、夫婦関係はもう壊れていた」という反論です。浮気の証拠と、壊れていなかったと示す材料の両方が大切になります。

「有責配偶者」とは何か

有責配偶者とは、離婚の原因をつくった責任のある側の配偶者のことです。ここでは、浮気(不貞行為)をした夫が当たります。

浮気をされた妻は、夫と浮気相手に対して、慰謝料を請求できる立場にあります(民法709条・710条)。この「責任がある側」からの離婚請求を、裁判所は特に慎重に見る、という考え方があります。

なぜ、有責側の離婚請求は認められにくいのか

自分で関係を壊しておいて、都合が悪くなったら「もう終わりにしたい」と離婚できるのでは、相手があまりにも不公平だからです。浮気された側が、一方的に追い出されるような形になるのは避けるべきだと考えられています。

そのため、有責配偶者からの離婚請求は、簡単には認められないとされています。

認められることがあるのはどんなとき

「認められにくい」とはいっても、絶対に認められないわけではありません。裁判所は、事情を総合して判断します。考慮される要素として、次のようなものが挙げられます。

要素 考え方
別居の期間 長期間にわたって別居している場合は、判断に影響しやすい
未成熟の子 経済的に自立していない子がいる場合は、認められにくい
相手の状況 離婚によって、妻が精神的・経済的に過酷な状況に置かれるなら、認められにくい
婚姻関係の実態 すでに夫婦としての実態がなくなっているかどうか

何年別居したら認められる、といった線引きは、ここでは断定しません。ケースごとに大きく違います。

「有責配偶者からの離婚は、裁判では通りません」と言い切る説明も見かけますが、実際には、条件がそろえば認められる余地があるため、「通らない」と思い込んで備えを怠らないことが大事です。

実際の相談から:夫側が出してくる主張と、妻の備え

ここからは、ご相談をもとにした例です。共通しているのは、「有責だから大丈夫」と思っていたのに、実際にはそう単純ではなかった、という点です。

相談の例:夫の弁護士が「関係が壊れたあとの交際」と書いてきた

  • 「もう壊れていた」という主張は、不倫した側の定番の言い訳。まず、その主張を崩すことに力を注ぐ。
  • 同じ家で暮らし、生活を一緒にしていたなら、関係が壊れていたとは認められにくいとされる。生活費の受け渡しも材料になる。
  • 夫婦らしいLINE、日記、毎日の食事の記録、写真など、ふつうの夫婦として暮らしていた記録を残す。
  • 別居のきっかけが不貞だったことも、はっきり主張しておく。

争点は、浮気が始まったときに、夫婦関係がすでに壊れていたかどうかです。浮気の証拠が十分でも、ここで夫側に押し切られると、慰謝料が低くなったり、有責としての扱いが弱まったりします。この妻のように、共働きで家計を一緒に運営していたことや、直前まで仲がよかった写真は、そのまま材料になります。

ここで気をつけたいのは、夫が別居中に生活費を払っている間は、離婚を拒否することで生活費も確保されている、という面があることです。ただし、拒否し続ければ必ず守られるわけではありません。婚姻費用の考え方は別居を始めるタイミングと生活費で、いつの分から請求できるかは婚姻費用はいつから請求できるかで整理しています。

補足:和解で終わると、「有責」と書かれないことがある

別の相談では、離婚裁判の中で多くの証拠を出し、裁判官も話の中で夫を有責として扱っていたものの、最終的には、慰謝料の低さを考えて和解を選んだ、という例がありました。和解では、「有責配偶者」という言葉が書面に残らないことがあります。

つまり「いつ有責と認定されるのか」は、はっきり告げられる場面ばかりではありません。有責としての判断を書面で残したいのか、金額や早期解決を優先するのか。どちらを選ぶかは、弁護士に相談しながら決めるのが安心です。

相談の例:調停で「有責側の離婚は通らない」と聞いたが、証拠は夫が認めたLINEだけ

  • 本当に裁判で「有責」を前提に戦えるのか、認めたLINEだけで慰謝料や離婚の拒否ができるのかを、先に弁護士に確認する。
  • 自白は、あとから「追い詰められて、状況的にそう言うしかなかった」と覆される。証人として法廷で話してくれるレベルでないと厳しい。
  • 養育費は算定表が基準。ただし、調停では「名目は何でもよい」として、算定表の額に別の項目を足した合計額で合意した例もある。
  • 財産分与は、住宅ローンやその他の借入と相殺すると、分けるものが残らないこともある。裁判までやるなら弁護士が必要で、その費用が払えるかも考える。

この例の分かれ目は、「有責だから離婚は通らない」という言葉が、証拠がそろっていて初めて力を持つという点です。調停委員の言葉があっても、不貞を証明できなければ、夫は「そんな事実はない」と争えます。自白のLINEは、使い方によっては役に立ちますが、それだけで安心するのは危険です(夫の自白や録音は証拠になる?)。

別の相談でも、自白のLINEと、相手とのやり取りだけがある妻の場合、それだけでは有責の証拠になりません。自白は、本人が認めなくなった時点で弱くなるためです。

相談の例:別居して数か月。離婚はしたくないが、持っているのはカード明細だけ

  • 離婚を避けたいなら、まず不貞の証拠を押さえて、有責であることをはっきりさせる必要がある。
  • ホテルの利用明細だけでは、不貞の証拠にならない。女性とホテルに出入りする様子の撮影が必要。
  • 家計の使い込みや借金は、それだけで有責にはなりにくい。生活できなくなる、財産を失うレベルなら話が変わる可能性はある。
  • 別居が長引くと、夫婦関係の破綻が認められてしまうおそれがある。急いで証拠を押さえることが先。

この妻に必要なのは、「疑わしい材料」を「言い逃れできない証拠」に変えることです。ホテルの明細は、その日そこに支払いがあったことは示しても、誰と何をしたかまでは分かりません。夫が「別の理由だ」と言えてしまいます。写真の条件はホテルの出入り写真は何枚あれば足りるかにまとめています。

もう一つ大事なのは別居の長さです。離婚を避けたい側にとって、別居が長いほど、前の表の「別居の期間」が夫に有利に働くことになります。別居した側が夫でも、動きを先延ばしにしないことが大切です。

相談の例:夫が離婚の裁判を起こし、同時に妻の言動を理由に慰謝料まで求めてきた

  • 不貞した側が、自分の不貞を棚に上げて相手の言動を理由に慰謝料を求めても、裁判所は慎重に見るとされる。モラハラの立証は、そもそも簡単ではない。
  • 言い合いの一部だけを切り取ったものより、全体の経緯と前後関係が見られる。浮気で信頼を失った結果の言動なら、その事情が考慮される可能性がある。
  • 一方で、金額がゼロになると断言はできない。「0円」「少額は認められる」と、答えが分かれることもある。
  • 勝手に家を出て行った場合、別居後の交際だという主張は簡単には通らないと考えられる。ただし、この件はここで答えられる範囲を超えているので、弁護士に委任して進めるべき。

この例で大事なのは、「相手が弁護士をつけているなら、こちらもつけたほうがよい」という点です。費用が重いのは確かですが、裁判は書面の書き方で結果が変わることがあります。迷うときは、法テラスなど公的な窓口で、費用の立て替え制度が使えるかを聞いてみましょう。

そして、関係の始まりが別居の前か後かは、あとから証明するのが難しい部分です。相手が話した内容は、録音や書面の形で残しておくと、争点になったときに役立ちます。

夫から離婚を迫られたとき、やってはいけないこと

焦ってサインする

「早く離婚届に判を押してくれ」「慰謝料はあとで話そう」と急かされても、その場で署名しないでください。離婚届を出したあとでは、条件の話し合いが難しくなることがあります。LINEや口約束だけで「家の名義をあげるから別れて」と言われた相談もありましたが、書面のない約束は、あとで話が変わっても守りにくいものです。

離婚条件を決めずに別居を受け入れる

別居を始めてしまうと、「別居の期間が長くなった」という事情をつくられるおそれがあります。別居に応じる場合は、生活費(婚姻費用)などの条件を話し合ってからにします。

感情的になって、記録を失う

腹が立って、夫のLINEや証拠を消したり、相手に連絡を取ったりすると、あとで不利になることがあります。

離婚に応じない場合の備え:「壊れていなかった」を示す材料

応じない場合、夫が調停を申し立て、まとまらなければ裁判に進む可能性があります。そのとき夫は、「婚姻関係はすでに破綻している」と主張することが多いです。先に紹介した相談のとおり、備えは日頃の記録です。

  • 夫婦らしいLINEのやり取り、家族で撮った写真
  • 生活費の受け渡しの記録、家計をどう分担していたか
  • 日記や、日々の食事・家事の記録
  • 別居に至った経緯(浮気が原因だったこと)のメモ

後から作ろうとすると不自然になるので、すでにあるものを保存しておくのがコツです。保存の方法はスクショの取り方と保存方法も参考にしてください。

「離婚に応じないと不利になる」と言われたら

夫が「もう気持ちはない。離婚しないなら生活費も出さない」と強く出てくることがあります。しかし、夫婦である間は、夫には生活費を分担する義務があります。離婚に応じないことを理由に、生活費を止めてよいことにはなりません。

また、「慰謝料は払うから」「早く終わらせたい」と、条件を先に示して離婚を急がせる夫もいます。提示された金額が妥当かどうかは、その場で決めず、いったん持ち帰って確認してください。書面をもらい、日付と内容を残しておくと、冷静に比べられます。

相談の中には、離婚を求める夫から「仕事をしていないから」という理由を持ち出された妻もいました。弁護士に「有責側からの離婚は認められにくい」という内容証明を頼もうとしたところ、離婚を進める場合しか受けられないと断られたそうです。事務所によって受ける範囲は違うので、断られても、別の弁護士や法テラスで聞いてみてください。

応じる場合に、決めておきたい条件

夫が離婚を強く望むなら、あなたにも交渉できる立場があります。離婚に応じるなら、次の点を整理します。

  1. 慰謝料。 離婚する場合の慰謝料は、一般に100万〜300万円程度と言われることが多いですが、事情で上下します。金額の考え方は離婚する場合の慰謝料相場をご覧ください。
  2. 財産分与。 夫婦で築いた財産を分けます。浮気をした側でも対象になります。請求できる期間は、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚から5年以内です(それ以前の離婚は2年以内。民法768条)。
  3. 養育費と親権。 親権は、浮気をしたこと自体では決まりません。これまでの養育の実績などから総合判断されます。
  4. 婚姻費用。 離婚が成立するまでの生活費です。
  5. 住まいとローン。 住み続けるのか、出るのか。ローンの名義はどうなるか。

住まいについては、相談でも悩む人が多い部分です。夫名義のローンを夫が払い続ける約束は、約束だけでは、あとで売られたり滞納されたりする心配が残ります。オーバーローン(売っても借金が残る状態)の家は、持ち続けるほど固定資産税や修繕費の負担もあります。どうするかは、借入先への確認と弁護士への相談をしてから決めてください。

決めた内容は、口約束ではなく書面にします。養育費は、公正証書にしておくと、払われなくなったときの手続きが進めやすくなります。

ひとりで悩まない

夫から離婚を迫られるのは、精神的にとても負担が大きい状況です。迷ったときは、弁護士に相談して、見通しを聞いておくと安心です。費用面が心配なときは、法テラスなど公的な窓口で案内を受けられます。

「離婚する」「しない」の気持ちの整理は、離婚するか再構築か迷ったときの整理の仕方の記事も使ってください。

よくある質問

気になるところを、質問ごとにまとめました。質問をタップすると、答えが開きます。

夫が弁護士を立ててきたら、どうすればいいですか?

弁護士から書面が届いても、あわてて署名や返答をしなくて大丈夫です。内容をよく読み、自分も弁護士に相談して対応を決めてください。相手に弁護士がついている裁判を、ひとりで進めるのは負担が大きいものです。

浮気相手と一緒になるために離婚したいと言われました。応じる必要は?

応じる義務はありません。合意するかどうかは、条件を見て、あなたが決めて構いません。浮気相手への慰謝料請求は、別に考えられます。

「別居してから付き合った」と言われたら、有責にならないのですか?

夫婦関係がいつ壊れたかは、争いになりやすい点です。同じ家で暮らし、生活を支え合っていた記録があるほど、壊れていたという主張は通りにくいとされます。別居の原因が何だったかも見られるため、経緯を整理しておきましょう。

夫が浮気を認めたLINEがあります。それで有責と言えますか?

それだけでは足りないことが多いです。認めた言葉は、あとから覆されることがあるためです。ホテルの出入りなど、別の証拠を重ねておくと安心です。

別居して数年たちました。もう離婚は避けられませんか?

別居の年数だけで決まるわけではなく、子どもの状況や生活への影響なども総合的に見られます。個別の事情で変わるため、弁護士に確認してください。

離婚したくない場合、できることは?

離婚に合意しない意思を、はっきり持っておきます。そのうえで、生活費の請求、浮気の証拠の整理、夫婦として暮らしていた記録の保存など、立場を守る準備を進めてください。

まとめ

  • 離婚は、あなたが合意しない限り、夫の希望だけでは成立しない。
  • 有責配偶者(浮気した側)からの離婚請求は、認められにくい。ただし例外もあり、「通らない」と思い込まない。
  • 夫側の定番の反論は、「浮気の前から関係は壊れていた」。夫婦として暮らしていた記録が備えになる。
  • 「有責」を前提にするなら、認めたLINEだけでなく、言い逃れできない浮気の証拠を固める。別居が長引く前に動く。
  • 急かされても、その場で離婚届や書面にサインしない。応じるなら、条件を書面で固める。

夫に主導権を渡さなくて大丈夫です。あなたのペースで、条件と気持ちを整理していきましょう。

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